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黄 麗穎写真展「彼のこと、今でも知らない」

2024年6月25日 〜 2024年7月8日

ニコンサロン

場所:東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー28階

本展示では、死産となった兄のことから展開している。
中国の一人っ子政策下、母は私より先にもう一人子供を妊娠していた。でも、思いがけず死産となってしまった。民間伝承によると、胎内で死んだ子は仏の眷属で、前世の因果から一時的な縁で両親と繋がっていたという。私の母親はそれを信じて、毎年霊山に登り、お線香をあげて祈る。子供の頃、兄弟が存在すると想像したことがあったが、今考えると、彼が無事に生まれたら、私はこの世にはいないのだろう。
2016年からの二人っ子政策、さらに2021年、中国政府は3人目の出産を認め、一人っ子家庭は、滔滔と流れる長江に沈んでしまったようである。皮肉なことに、一人っ子政策の時期の親達は子供がたくさん欲しかったのに、今ではほとんど産めない状況で、産める若者たちは逆に産みたくないのである。そんな反転した時代に、私は家族内の喪失感や地元の仏教信仰との繋がりを通じて、過去と現在、記憶とイメージの隙間から、兄の痕跡を描き出す。さらに、個人の記憶から社会的記録へ広げ、社会的・制度的環境を再考する。